『プルートで朝食を』

プルートで朝食を [DVD]

プルートで朝食を [DVD]

先日レンタルした『プルートで朝食を』を鑑賞。

性同一性障害の主人公(キトゥン)の波乱万丈人生を、あまりにさらりと描いてしまう世界観には、二―ル・ジョ―ダンの手腕にまた脱帽させられてしまうわけだけど、浮遊感のあるスクリプトの随所に心臓をナイフで突き刺されるような痛みをごく自然に差し込んでゆくのがまた凄い。これは、キリアン・マーフィに助けられてるとこが多いし、まさかここまでキリアンの女装及び演技が違和感を感じさせないとは思わなかった。私のキリアンへの愛が増したのはいわずもがな、で。酔っ払いの演技は、酒を飲まない傍観者の方が上手いとはよくいうけれど、心が女性の演技を男性がすると歩き方や手の動かし方など細部まで観てて非常に艶っぽい。(だから日本の女形の美しさはいつも溜息もの)キトゥンの場合は色気というよりは愛しいまでの可愛さなのだけど。

ともすれば、鬱になりそうな題材をポップな音楽とヴィヴィッドな映像で彩ってるのも魅力的だし、1章2章3章・・・と物語風に進んでいるのも、当然キトゥンが自らの悲しい人生を物語だと思っては涙を飲んでいるから、という意図的な狙いと同時に、観ている側の分かりやすさへも配慮されてて良い。大体こういう映画で私はウザく感じるキャラがいるのに、この映画はそれがなくて愛しい登場人物ばかり。ちなみに私はリーアム・ニーソンが大好きで、彼の演じるリ―アム神父(!!)がお気に入りになってしまった。ラストは、キトゥン自身が幸せになったわけではないけれど、彼女は他人の幸福を我が身のように抱きしめることができる人。終わらぬストーリーの次章は、観客が思い描いてゆけば良い。私のようなナメクジ人間に向けられた『前向きキトゥンの生き方講座』 ― 後ろ向きな人はハッとさせられるかも。

「シュガー・ベイビ・ラブ」は嫌いな曲だったけど、映画終わったあとはしばらく脳内エンドレスで困った。私もキトゥンの折れにくさを見習うか。