蜂蜜の香りで激辛な仕上がり


今さらながら、飛行機内で3回も鑑賞してしまった「ビー・ムービー」の感想でも。

これは本当に良く出来た映画だった。子供向けではない…です。序盤では、蜂の社会を就職活動になぞらえて構造的に映し出すのだけど、コミカルでありながら、機械的で意思を排除した人間の労働社会を思わせるつくり。与えられた仕事に満足し、生涯を通して没頭して働き、蜂の薄命さまで軽く流す、就職説明会は少し冷やりとさせられる面も。「このまま決められたレールの上を進むだけの人生で良いのか?」と今時のフリーターちっくな考えを持つ熱い主人公のバリーは外の世界を見てみたいと強く思う。ただ、バリーのような小柄な働き蜂のは大概、カス掃除などの雑務を与えられる。外回りの蜜回収(?)はマッチョでガッツのある蜂の仕事であり、当然女受けも抜群。笑ってこの映画を見てる女性の大半だって、我が身を振り返ればどうせ似たり寄ったりだろう。

外の世界に出たバリーを圧倒的なクォリティの高さで、臨場感たっぷりに描き、かなり引き込まれる。飛行のシーンはスピード感もあって、下手な実写映画よりも迫力があるし、バリーを含む虫たちの研究しつくされた仕草がまたカワイイ!! (米公式サイトでも可愛い姿が見れます)バリーが出会うバネッサという花屋の女性の厭味のないカラッとした性格も気持ちがいい。

本作の見どころとなる裁判のシーンでは、元ネタが分かれば確実に笑える痛快な仕上がり。何せ、レイ・リオッタスティングが当然本人の声で出演するのだから、たまらない。ただ、情緒に流されやすく冷静さに欠ける陪審員たちの姿は「日本の裁判員制度はこうなんなきゃ良いな―」とか考えちゃうくらい愚かだったこともまた事実。クッと口角を片方だけあげるような皮肉な笑いが込み上げる、さらっと流されるブラックな大人なジョークが満載だった。そんな、ドリームワークスに万歳三唱。ラストの展開も、夢と現実の曖昧な境界線を見せてくれるものだった。一応、英語音声&日本語字幕版と日本語音声&日本語字幕版を見たけれど、日本語スタッフの苦労も並々ならぬもんなんですね。

さて、こっからは勝手な邪推に過ぎないのだけど、そもそも「」という生物の産み出す自然の甘味「蜂蜜」を取り上げたこと自体が私は意図的なものがあるんだと思う。

最近、ますます拍車がかかっている米国のベジタリアニズム。牛・豚・鶏はもちろん、場合によっては乳製品もダメで、魚類も基本的には食さないので、カツオだしもご法度だ(個人差はあり)。だが、ベジタリアンのさらに上をいく困ったちゃんの「ヴィーガン」との違いは何かといえば、蜂蜜を食すか食さないか、という点。詳しくはここで。このまるで宗教のように細かく分類された規定に沿って自分の食生活を納得のいくようにがんじがらめに縛り、自己満足に浸っている人間たちへの皮肉の塊としてこの映画が作られていたら、このうえなく私は嬉しいな―と思ってしまう。

ちなみに、『Bee Movie』は『B Movie』つまり『B級映画』ということで、タイトルも面白い。