『僕の彼女はサイボーグ』

水曜日、地元で観てきました。この程度の感想でネタバレだの騒ぐなら絶対観ないでください。

猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』で知られる韓国のクァク・ジェヨン監督作品。といっても、スタッフもほとんど日本人、舞台は東京、登場人物ももちろん日本人で日本資本。…なはずなのに、韓国的な演出は冒頭からプンプン臭ってくるし、それは別に気にならないどころか、日本で作りながら監督のカラーが現れているのはむしろ良いことだと思った。特にタイトルが出るまでの「彼女」とジロー(僕)の2007年に起きる出会いと別れの流れなんてその典型。綾瀬はるかが可愛くなかったら、ただの電波でしかない。あえて日本映画でこういう見せ方をされるのはある意味新鮮だった。さらに、このタイトルが出るまでが重要で、2人が窃盗をして逃げるシーンのスピード感の無さや、バックミュージックやエフェクトなどを一切排除した地味な演出に、物足りなさすら感じていたが、これはラストを観てから意図的なものだったということに気付ける。彼女の破天荒ぶりも、キャラクターの個性を印象付けるのに成功している…が、何の目新しさは無かった。むしろ誰か止めてやれや、というくらいモラルが欠如してて、ある意味すごい。

そして物語が一年後の2008年ジローの誕生日に入り、「彼女」が再び現れるのだが、この登場シーンも明らかにターミネーターへのオマージュだし、他の場面でも同様なオマージュが見れる。ただここから先の展開がオカシイ。オカシ過ぎる。まず、60年後のジローが「彼女」に出した指令は、若きジローの心を痛めた事件を次々に解決させるということだった。火事で少年たちを助けたり、学校に入った凶悪犯から生徒たちと教員を助けるといったもの。この場面で時間を稼いでいるのも苛々するけど、それ以上に、ラストの大地震はジローが時の流れに逆らった(彼女のタイムスリップで過去を塗り替えた)ためであり、ジローが招いたものだ。何の突っ込みもされてないが、恐らく火事や学校の事件で助けた人たちも死んでるだろう。なのにジローは被害者面も良いとこで、崩壊した東京を見つめる。とてもじゃないが復興に手一杯でどうやって「彼女」を60年の間に作り上げたのかという説明はスッポリ抜け落ちていて、ご都合主義の極み。宝くじもいつ当てたの?(ただ地震の場面は圧倒的なCGで並みの日本映画とは比にならん程の迫力で、少なくとも「最終兵器彼女」の100倍は見ごたえがある)

それだけじゃない。「彼女」が60年後のジローに頼まれて、ジローを故郷に連れて行くシーンもオカシイ。ジローの故郷は災害で無くなってしまったから、過去の故郷=ジローの少年時代に戻るのだけど、どう見たって「三丁目の夕日」の世界だ。ジローは大学生だから私と同じくらいの年齢のはずで、設定も2008年だから1990年代半ばを描くべきなのに、服装まで「昭和」とは、歴史考察的に見ても頓珍漢、甚だしい。他にも、つじつまが合わないところが3桁くらい出てきたように思えるが、一番気になったのはアスカのフィギュアが綾波レイに摩り替わっていたことだったり…無計画に作りすぎたのか、大金はたく前に誰か気付けなかったのか、後戻りできない感じが痛い。

おまけにお国柄の違いだろうけど、笑いのセンスはギャップが大きすぎた。グロテスクでしかない笑いの取り方はあまりに幼稚で、日本のスタッフの馬鹿さが露呈してると言った方が良いんじゃないか…監督もどれほど日本映画を観たかは知らないけど、もう少し笑いは研究したほうが良かった。アジアだけでも「笑い」にはデカすぎるギャップが存在し、どこが優れているとかじゃなく、これは文化なんだから仕方ない。でも無視することの出来ないものであり、非常にセンシティブだったりするから取り扱い注意なのに。(…ったく、だから西安大学で日本人学生が下品な寸劇をやらかしてボッコボコにされたんだよ…)

大きな問題は一体どういう層をターゲットにしているか、ということもある。なぜなら、素晴らしい素材が揃っているから。今作で最も評価できる点であり、唯一の見所と言ってもいいぐらい、綾瀬はるかの可愛すぎるコスチュームプレイを眺めて悶絶する価値は十分にある。好きな人はこれだけを目当てに映画館に足を運んでもいいくらい。さらに、小出恵介惨めになればなるほど、泣けばなくほど輝く俳優で、これに関して今現在彼の右に出る俳優はいないんじゃないかと思うので、そこも評価点。

鋼鉄天使くるみ以降に生まれた、SF萌えの最強コンビネーションを実写で(メイドじゃないけど)、しかも可愛すぎる綾瀬はるかで拝めるのだから、ターゲットは絞れたかもしれない。しかし、SFには例えフィクションでも明確な裏づけが必要で設定も綿密にするべきだったし、ラブコメにしても上記の「笑い」のズレは致命的。おまけにサイボーグじゃなくて、どう見てもアンドロイドだし、ジローが彼女に名前を付けないのは不自然過ぎた。かといって韓流ファンには見所ゼロ。一体誰に薦めたら良いのやら。横ですすり泣いていた少女に文句は言えないけど。