『ハプニング』

地元の映画館で『ハプニング』を観た。この程度でネタバレだと思うなら、ぶっちゃけ最初から映画なんて観ない方が良いと思う。

シックスセンス』や『ヴィレッジ』で知られるM・ナイト・シャマラン監督作品。CMだけ観ると興味をそそられる面白そうな作品に感じるが、本編を観ると拍子抜け…それがシャマランの売りとも言えるので、期待はせずに挑んだ。しかし、この監督そろそろ大手映画製作会社にも見切られて出資してくれなくなるんじゃないか…いつまでも『シックスセンス』の頃のおこぼれにすがってないで、細々とインディペンデントでB級映画を作った方が、才能を爆発させてくれそうだ。

ミツバチが突然消え、NYのセントラルパークで遂に人間たちに異常が起きる。人々は意味不明な言葉を発し、方向感覚を消失し、自殺し始める。原因は一体?という具合のパニック映画。飛び降りや、銃で頭をぶち抜いたり、自動車で木に突っ込んだり、ガラスの破片で地味に手首を切ったりで、さしずめ映像版『完全自殺マニュアル』といったところで、我殺しのオンパレードはなかなか見ごたえがある。どうやったら死ねるか、みんな冷静に工夫しているようで、本当に頭イカレちゃってるの?という疑問も絶えず浮かぶが、異様なアングルからのショットなどからセンスの良さを感じる。

最初はガスか何かのテロ攻撃かと思われたが、徐々に『植物たちが怪しい』と睨む高校の科学教師エリオット。植物が出す化学物質を恐れ始め、風がそよぐ度にビクつき、突風が吹けば『逃げろ!』と叫ぶ。だったらマスクでも付けてれば良いじゃん!ゼーハー息切らしながら逃げるより、息を止めて耳と鼻ふさげよ!と、突っ込みたくなるほどの主人公たちの暴走ぶりにバカバカしさすら覚える。あえて何処からが避けなければならない『風』なのかクッキリした線がない分、シュールではあるけれど。その斬新な発想がシャマラン流か。*1

木の枝からぶら下がるブランコで子どもが遊ぶと、体重の負荷により木がギシギシと音を立て続けるが、何事もなく終わる。挙動不審で落ち着きの無い妻も気がつけば普通の人になっている。家に泊めてくれるが、疑心暗鬼な気チガイババアも呆気なく終わりを迎える。思わせぶりな演出を多く含みながら、そのほとんどが肩透かし。シャマラン監督は意図的に観客を勘ぐらせては、罠にはめて楽しんでいるようだが、そんなお遊びに付き合いきれなくなってくる。

エリオットが指にはめているムードリングは面白い小道具だった。人の目に見えない感情すら、ムードリングの色で把握しておきたい人間の心理を表しているようで、滑稽。実際、私もムードリングを持っててたまにはめるけど、全くあてにならない代物で、劇中でもさり気なく映ったムードリングの色が、まったく場違いな『青(平和で穏やかな心理状態)』になっていたのはネタか偶然か。

監督はヒッチコックの『』にインスピレーションを受けたとか言われているが、観る側が『なるほどね』と受け取るかどうかは別だろう。『鳥』でも原因は不明なままだが、当然今作でも同様に本当の原因は明らかにされない。原因追求がこの映画の焦点ではないし、そもそも最初に『自然現象を完璧に証明することなんて無理』と言っちゃってるので、結局何だったんだよとケチを付けるのは筋違い。
まだ『ハプニング』なのだから、自然から人間への警告が兆候として始まったばかり、自然への畏敬を今こそ思い出せと取って付けたような教訓も有りと言ったようなオチ。隕石ドカーンでこの世の終わりが来るような映画よりジワジワと迫る生命の危機というのは性に合っていたけど、手間ヒマかけたトンデモ映画というレベル。しまいにはシャマラン自身が、これはB級だからと言い切る開き直りなので、観る時は覚悟するように(笑)

…だからと言って私はこの映画を嫌いとは言わないんだけど。カルト的なファンが生まれそうだ。

・追記
ただ、実際にミツバチが姿を消すという事例はしばしばあり、以前から気にかかっていたことだったので、単純に『まさかそんなこと…』と一笑に付すことが出来ない自分が居たというのも本音。さすがに自殺はしなそうだけど…恐いなぁ。
J-CASTテレビウォッチ:私見クローズアップ現代:働きバチが過労死?他人ごとでない米養蜂事情

*1:後日追記