『インクレディブル・ハルク』

言われるほどアン・リー版の『ハルク』が悪いと思わないんだけど、やっぱりパンツが一番問題だったんじゃないかな。ハルクに変身したとたんに何処からとも無く現れる、あのパンツ。その謎が解けただけでも、アン・リー版からスタッフも何もかも一新して作った『インクレディブル・ハルク』の価値は十分にある。まじで。

事故でガンマ線を大量に浴びることで主人公のブルースが、ハルクに変身してしまうまでを丁寧に1時間かけて描いた『ハルク』からバッサリ決別し、冒頭2分弱*1で片付けるというスマートな暴挙に出ているのだけど、その後の展開を考慮すれば全く雑ではなく、むしろ個人的には大歓迎。

そして舞台は突然ブラジルのスラム街になるが、ブルースと彼を追う米特殊部隊の民家の間をすり抜けるパルクールのアクションはスピード感もあって気持ちが良い。追い詰められたブルースはヒクソン・グレーシーが彼に怒りを鎮めるコツを伝授したことも虚しく、ブルースはハルクへと変身してしまう。

ブルースは内なる力を捨てたいと願うが、反対に特殊部隊に属するブロンスキー(ティム・ロス)は39歳という年齢だけでなく元々恵まれていない体格もあり、強靭な肉体を欲するようになる。この対比が面白い。ウィリアム・ハート演じるロス将軍に『君は46歳だっけ?』と言われて『39歳です』と答えるティム・ロスのサバ読みもあまり違和感が無い。何を隠そう(?)ティム・ロスを迷いなく愛する俳優トップ3に入れる*2は、彼が演じたからこそ、ブロンスキーの弱さとロス将軍に対する従順さ、そして身を滅ぼしてでも戦いに身を投じるバカさが見事に表れたんじゃないかと思う。ロス将軍が、ブロンスキーを戦闘モンスターにすべく血清を注入し、彼が苦痛に顔を歪ませる描写も何かアレだったりする。ティム・ロス素晴らしい。実際は170cmだが、ウィリアム・ハートと並んだときに彼を見上げる小男ぶりも良いよ。

軍がハルクを捕獲するために一方的に攻撃をしかける場面は、ハルクが人間の形をしているぶんスケールのデカイいじめにしか見えない。それもそのはず、いじめ以外なんでもないんだから褒め言葉だ。さらにリヴ・タイラー演じる恋人ベティを抱えて守ったり、どこぞの洞穴に彼女を連れ込み雷に向かって威嚇する姿はキング・コングだな。真面目すぎたアン・リー版ではあまり感じられなかった、ハルクを応援したくなる気持ちが込み上げてきた。『耐えて!踏ん張るのよ!ハルクゥ〜!』

他はブルースの破れたパンツから覗く尻のチラ見せにトキめいたり、風呂場で倒れるブルースの尻から太ももにかけてのほっそりとしたラインに悶絶したりと男の尻フェチにはたまらないサービス満載。それに引き換え、久々に可愛らしいヒロインっぷりを見せてくれたリヴ・タイラーは体格がハルクに負けず劣らずガッチリ。むしろ『シーハルク?』な感じなので、下着姿にあまり色気が無いのが残念。脚本はエドワード・ノートンが修正しまくったらしいけれど、散りばめられた寒いギャグも彼のアイディアなのかと思うと、彼って本当に『めんどくせ―*3な人なんだろう。

クライマックスのアボミネーション(モンスター化したブロンスキー)との戦いは、もう少し重量感を感じさせても良かったけれど、CGの出来は決して悪くは無い。それよりも、ブルースが捨てたいと思っていた超人的能力を初めて求めるというのが重要で、彼の精神的な強さ(選ばれし者って感じ)が描かれていてグッと来ると思っていたら、決め技の『ハルクスマーッシュ!!』ってお前ノリノリだったんかい、という突っ込みを物ともしないアホっぽさが好きです。

ただ尺が短いだけ、彼の苦悩や宿命的なエモーションが少し希薄になってしまったのは勿体無い。しかも、この問題でマーヴェルとノートンが仲違いしているので、続編があったとしても彼が演じるかどうかすら怪しいし…私は彼のインテリなイメージとブルースが合っていると思うから、ハルクになった時のギャップが良いと思うんだけど。まぁ、コミックスの方は地球に納まらない規模になってるし、映画がどうなっていくのか気になる。

関連リンク
公式HP
『インクレディブル・ハルク』をめぐるハリウッドの不思議な常識(eiga.com)

*1:この辺の参考は『映画秘宝』9月号です。

*2:そうです。もう好きにして!って感じです。

*3:多分、マーヴェルいわく