『デトロイト・メタル・シティ』

魔王/ラズベリーキッス

魔王/ラズベリーキッス

若杉公徳の人気漫画を実写映画化。カヒミ・カリィフリッパーズギターなどの"オシャレな音楽"をするために大分の犬飼町から上京した青年が何故かデスメタルバンドデトロイト・メタル・シティの人気ヴォーカルヨハネ・クラウザー・二世として活躍して苦悩するというコメディ。笑いどころは、根岸が好きな女である相原に音楽性を褒められたばっかりに、どんなに罵倒されても自分の"ポップス"に絶対的な自信を持ち続けているところであったり、あれほどクラウザーになることを嫌がっている根岸が、実はドSな内面を持っており、自らクラウザーに扮したり、昼間に(根岸で)溜まったストレスを夜のステージで(クラウザーとして)発散しているところだろう。

映画では漫画のエピソードをいくつか組み合わせながら、ジャックとの対決をクライマックスに持ってくるという構成なため、必然的にラストの盛り上がりは欠けるが、確実に笑いどころを押さえているため十分に楽しめた。原作のエピソードを一本の映画に繋げるために設定に若干の変更点があったが、それほど違和感がない。

しかし、この映画はつくづく監督ありきではない。キャストありきで全てが動いている。効果音や、CGなどのエフェクトを使いがちなコミック原作特有の戯画的演出を抑え気味にしたのは良い。ただ細かい運びにキレがなく、全体的にグダグタとしているのが残念。奇妙な『間』を取りながら、それにあまり意味を持たせていないように見えるのは、監督の李闘士男がバラエティ番組の畑で育っていて、映画監督作品はこれでまだ二作目だということが原因かもしれない。

しかし松山ケンイチを始めとした役者陣のイメージがことごとく漫画と合っているため、ようやく笑える余裕が生まれるのだ。しかも、佐治君を演じた高橋一生の歌声が、趣味でも音楽をやっているだけあって非常に上手く、惚れてしまった!! まさに神レベルのキャスト。さらに細田よしひこロバート秋山も個人的にはピッタリの選出だ。細田は良いね、正直まともな役をやると独特の妖しさからキモくなりがちな彼だけど、これからもどんどん普通じゃない役をやって欲しい。さらに社長役の松雪泰子や、DMCファンの大倉孝二岡田義徳なども嬉しい限り。加藤ローサの可愛さが無ければ、相原の馬鹿としか言いようの無い天然さも表せなかったかもしれない。

DMCの楽曲も実際のデスメタルとは程遠いが、歌詞のインパクトが原作では魅力的なので、まだ歌詞を聞き取れるような曲作りを優先したように思える。それでも聞き取りづらいので…字幕を出しても良かったんじゃないかと思う。あくまでも漫画を未見の人のために。あと秋山の技術面は仕方ないが、ドラムを叩いてない割に重低音が効いていたのは野暮なツッコミかなぁ。根岸の歌に関しても、カジヒデキが担当しただけあって、アサトに"お遊戯"よばわりされるほど劣悪な歌ではないが、松山ケンイチが全身でキモさを作り出そうとしているので良いだろう。

聞き取りづらいといえば、役作りの関係か松山ケンイチの滑舌が根岸の時に以上に悪くて驚いた。モジモジキャラでも、声はこもらないようにすべき…でもカワユスなので許す。松山ケンイチにはとことん甘い甘い甘い甘い〜♪なのです。笑って許して。まぁ漫画を読まずに映画を観た人は、漫画を読むべし。万人ウケするもんじゃないけど、それが良い。

デトロイト・ロック・シティ [DVD]

デトロイト・ロック・シティ [DVD]

完璧に蛇足なんだけど、デトロイト・メタル・シティの由来になっているのは当然KISSの『デトロイト・ロック・シティ』で、この映画にもジャック・イル・ダーク役でジーン・シモンズが出演しているけど、この『デトロイト・ロック・シティ』って映画も実は結構好きだったりする。あのターミネーター2のエドワード・ファーロング主演の青春コメディで、興行的にはコケてしまったけれどカルト的な人気がある。なかなかお馬鹿でテンポの良い作品なので、ぜひぜひ観てみやがれ。