『シャカリキ!』


だいたい月に20くらい試写会やら劇場鑑賞券に応募しているんだけど全く当たらない、私はクジ運とかそういうのが全くないタイプ。でも珍しく当たったのが、よりにもよってシャカリキ!』で、友達誘ってはるばる新宿まで行ってきたわけです。ネタバレは文字を反転してありんす。

ザックリと言ってしまえば『坂』に異常な執念を燃やすチャリバカ(というか只のバカ)である高校生のテルが、廃部寸前の亀高自転車部に入りロードレースを始めてチームプレイを通して、己を知り成長していく典型的なスポーツ物語。

元々漫画が原作であるこの映画だが、D-Boysをゴリ押ししたくて仕方ないワタナベエンタの企みが最悪の形で現れた映画と言っても良い。いかにも少年漫画らしい暑っ苦しい画風は映画ではサッパリとした印象に押さえられているが、最大の問題はこのテルという主人公を全く応援する気になれないということにつきる。ツッコミどころというサイドディッシュも多く添えられているが。

未読ながら一応調べると漫画の主人公は無口だが、自然と人を引き寄せるタイプらしい。同様に映画でも極めて無口であるので、原作に忠実なんだろう。しかし、それ故に演技のハードルはかなり高くなる。しかしテルを演じる遠藤雄弥は、ただ黙っているだけなのだ。最初のインター杯で負けた後も、悔しさが全く感じられない。『俺は負けへん!』…ってか、負けてるから。棒読みでこの台詞を言われても、残念な男にしか見えない。だからインター杯で勝利を譲った鳳帝高校自転車部のエース・ユタ(鈴木裕樹)の打倒を狙う市民レース、ゲロルシュタイナー杯でも、ちっとも応援する気になれないのだ。

彼の演技力だけが問題なのではない。インター杯のロードレースのルールはマネージャー(南沢奈央)や、亀高自転車部のブレインである鳥越(坂本真)が細かく説明をしてくれた。しかし、ゲロルシュタイナー杯では、チームが並んで走行するというルールもなく、さらに【自転車を肩で担ぐという暴挙に出ることも】可能であるというのだ。素人に説明も無く、こんな破天荒な展開を見せても困るだけだ。丁寧さが足りず、雑な運びが多い。おまけに【画鋲がバラ撒かれてる】なんてマジで起こり得るの?すんげ―のね。

チームのエースである鳩村を演じた中村優一の演技はノーコメントだが、キャラクターとしてはむしろテルよりも応援したくなる、分かりやすい役どころだ。だからこそ時間を取った彼のマネージャーへの告白【ゲロルシュタイナー杯で優勝したら付き合ってくれ】をラストに一切触れないのは無駄である。だったらいっそ告白のシーンなんか撮るな。せっかく南沢奈央が可愛く見え始めていた頃だったのに、実にもったいない。ちなみに鳩村のアダ名は『ポッポ』なのだが、マネージャーがテルにチームメイトのアダ名を紹介するときにポッポだけ紹介されない。ただ忘れられただけ?わかんなくて最初『汽車ポッポ』かと思った私はバカか…バカですね、はい。

野暮なツッコミを入れてしまえば、廃部にまで追い込まれた亀高自転車部の看板を温水洋一演じる教頭が無造作に捨てるのに、何事も無かったかのように看板が戻っていることが気になった。いっそ教頭が焼却炉に看板を放り込んで、ゴウゴウと燃える様をしんみりとメンバーが見つめたりして欲しいもんだ。

そして最後の最後はナンダカンダで、一人で戦っていたユタが一番凄いんじゃね―のとか思ったり。

脇を固める柄本明原田泰造の演技はいわずもがな。特に亀高自転車部のコーチであり、ユタの父親を演じた泰造があってこそ生まれる安定感があった。さらに、テルの姉役の中越典子がまだ学生服がいけちゃうことも素敵だ。デブの池田哲也やヒョロっとした小柳友が演じた個性的なチームメイトも印象的だ。何より坂本真が好きなので、彼が一番かわいい。

さらに、カメラだけがやけに巧く、躍動感や臨場感をもってレースのリアリティを表現していることに感心してしまったのだけど、エンドロールを観たら『クライマーズ・ハイ』でも撮影を務めた小林元だった。彼はウマいなぁ。

途中で挟まれるギャグらしきシーンは寒いと思うか呆れ笑いが漏れるかどちらか。まぁ、坂は坂でも映画は下り坂をダダずべりするだけだ。もっと丁寧に映画いていれば爽快な作品になったかもしれない。惜しい。

シャカリキ! 亀高ジャージ サイズ:M

シャカリキ! 亀高ジャージ サイズ:M

こんなのもあるらしい。

《蛇足》
D-Boysは俳優集団を名乗っているが、俳優としての実力を伴っていない者を主演に迎えて立て続けに作品を発表しており、それも一部のファンに向けられたようなマイナーなものばかりだ。下積みをすっ飛ばして無駄遣いにするよりも、(才能があるか見極めて)慎重にキャリアを歩ませてやるのが事務所がするべきことである。あと遠藤雄弥は演技どうこう以前に、ニキビをどうにかしろ。