『アイアンマン』

若気の至りや、精神と肉体との葛藤や、ガールフレンドに正体を明かせない苦悩だのに疲れてしまった、私の父親のような人にはうってつけのヒーロー映画。本国では女性層の熱い支持も手伝って大ヒットを記録したのは周知の事実だけど、日本では初登場1位という滑り出しは良かったもののプロモーションもパッとしないものばかりで、興行収入もいまいちの様子。原作本すらロクに販売されていないコミックの映画が盛り上がるほうが不思議なくらいなので、せめてファンのために公開に先駆けて翻訳版コミックを販売するとかすればいいのにね。ハルクもまた然り。単発的に儲けれたらそれで良いやという投げやりさを感じるし、観客の基盤を固めないで勢いに頼るようじゃ、そりゃ伸びないよな。というわけで私も概要は昔から知りながらも結局、原作未見の状態で挑んでます。

というわけで、これほど無責任で自由奔放な中年男がどうしてこれほどカッコいいのか、という件について。亡き父の後を継いだ軍事企業CEOであり天才発明家のトニー・スタークは、武器のデモンストレーションのために出張したアフガニスタンでテロ集団に拉致される。大量破壊兵器の製作を命じられたトニーは、フザケンナと脱出のためパワードスーツを作る。これがアイアンマン誕生の瞬間なわけです。

毎日仕事も美酒も美女も賭け事も惜しみなく全力を注ぐトニーさんの精力を、男性諸君は分けてもらいたいだろうね。それでもトニーさんは自分の作った兵器が悪用されていることに今さら気が付いて、凹みまくります。この辺の無知ぶりも、アメリカ至上主義な愛国者を揶揄し、されていることに気付かずに『アイアンマンかっけ―』と言ってるメリケン人が大半なんだろう。そして、そこからのトニーさんの立ち直りの早さもすごくて、スーツ改造後の落とし前の付け方もヤンキーレベルで、無責任極まりないんだけど、それが社長なんだよね!と言わしめる勢いがある。何より演じているのが、ジェットコースター人生を送ってきたダウニーJr.だということが有無をも言わせぬ説得力を帯びていて、渋いチョイ悪オヤジがあのパワードスーツの中で汗だくになっているかと思うと、痺れる。それほど長身でもないし、ガタイが良いイメージが無かった彼をチョイスしたキャスティングが一番成功している。

かと思うと、コネコネと武装集団にばれないようにフィギュア…じゃない、パワードスーツを作ったり、その改造バージョンを夢中で作ってる姿がどこまでも少年で、なるほどこういうところに女はくすぐられるのかと、またしても男性諸君は学ぶところが多い…と言いながらリアルに引きこもって黙々と作業をし始めたら、彼女が愛想尽かして出て行くのが関の山なので要注意。『ダークナイト』は自分も冷静さを欠いて、アクション面はどうも甘く評価してしまった部分があるのだけど『アイアンマン』はその点もクリアーしている。乙女なポーズで空中と飛び回る爽快感もたまらないし、無鉄砲さも手に汗握るし。武器を持つのではなく着ているので、どこから何が飛び出すかワクワクする仕掛けが満載。オモチャ臭さが漂う仏頂面フェイスも、かわいい。でも、敵であるオバディアの動きがまんまハルクで笑える。

グウィネス・パルトロウジェフ・ブリッジスなどの脇も個性的で、オフビートなヒーロー映画にはちょうど良かった。次作も楽しみというか、次からが本当に面白くなるんだろう、これは単なる始まりに過ぎないんだろう、という期待に胸を膨らませてる。あと、60年代のアニメ版テーマソングが流れたときに敏感に反応しただけで、きっとファン向けのネタがあったんだろうな―と思うとモヤモヤするのであった。

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公式サイト【http://www.sonypictures.jp/movies/ironman/site/