『ハルフウェイ』

ほとんど北乃きい目当てで観ました。制服が似合うし、快活なイメージがよく合っている。さらに岡田将生との相性の良さは『太陽と海の教室』で既に証明されているし。岡田の草食ぽさって、今さぞかし重宝されているんだろうな。

レイプだのヤクだの妊娠だの物騒なテーマにも関わらず、純愛を謳う携帯小説が映画化される昨今、そんな暗いキーワードを用いずに至って平凡なカップルを描いている。平凡だということはそれだけ『自然』さが問われるということだけど、その点に関しては全く問題なく成功している。逆にここまで初々しいと不自然になりかねないけれど、これだけ世界観が丁寧に作られていれば不安も無い。脚本は役者に台詞を与えるというよりは、ただ流れを作るだけで『間』を含めた役者のやりとりが生きている。かといって自由過ぎずに無駄がないのが良い。

特に素晴らしいのはカップル成立に至るまでの流れで、ヒロ(北乃)が告白をしようとしているのを知ったシュウ(岡田)が逆に告白をするも、嬉しくて飛び上がるような気持ちを抑えてヒロが『考えさせて』と言う。『え―!』状態のシュウ。チャリンコで走り出して喜びで坂を転げ落ちるヒロ。笑い合って一緒に帰るかと思いきや、ヒロは『私こっちだから』と逆方向にチャリンコを漕ぐ。カメラは引いて画面から北乃が消える。遠くに後姿のシュウ。大きく間をとって、突然『やっぱり一緒に帰る―!』と全力疾走のヒロが画面に滑り込む。

観たのが二週間以上前なので記憶が曖昧だけど、こんな感じだった。恋人関係が成立して、一番浮かれているとき、あたかもこの感じが永遠に続くんじゃないかと思い込んでいるような、10代特有のあの感じはそんなに長く続かない。すぐに彼女が彼氏が東京の早稲田大学に行くことを知るからだ。

この彼女による尋問のシーンがまた女性目線では経験とダブるものがあるかもしれない。『ねぇ、私に何か言い忘れてることない?』『…?いや、ないと思うけど』『わっかんないかな―』『だからなんだよ』台詞は違うかもしれないけれど、この繰り返し。女はどうしても男の口から言って欲しいのだろうけど、男からすれば相当面倒くさいんだろうね。それでも『言いたいことがあるならとっとと言えよ』と言わない彼はとても優しい…私なら言ってしまうよ。

ラブファイト』では大阪弁のデーコン芝居が鼻についた大沢たかおの教師役も今回はラフで力まない雰囲気が良かった。北乃とのやりとりも『ラブファイト』と比較しても、より自然かつ面白い。東京へ行ってほしくない北乃の気持ちに、やんわりと男の視点からアドバイスをする。

無駄な音も拾っている音響もリアルな現場の空気が伝わる。特によく音が反響する体育館の一角で、岡田が担任(成宮)に相談する長回しのシーンは印象深い。女が見ていないところで、実は何も考えていなそうな男が真剣にひとりの女のために悩んでいるんだなぁと、思わずこっちも都合のいい妄想を働かせたくなったり。

まぁここでいっちょ『誰もが一度は経験する青春の風景を台詞のない台本で…』うんぬんかんぬん言いたいとこなんだけど、まっとうな高校生活を送った記憶がない私には共感できる箇所はほとんどなかった。ただ周りの女子が必死になって写真を撮っていたのを覚えています。『勉強一瞬!!一生青春!!』とデカデカと小黒板に書いていたクソアマがいたけれど、本当は青春が終わることを知っていたに違いない。だから終わりある青春を必死に形にしようと、すくってもすくっても指の隙間から零れ落ちる砂のような瞬間をカメラに収めていたんだろうな。傍観者としてそれを眺めていただけに、この映画で写真を撮り合う場面はリアルなものに思えた。

進学に関しても「そりゃそうだわな」という具合に話は転がる。意外と入試へ送り出す電車の場面はアッサリで、湿っぽさはない。何処で終わるのかな―とこちらが思ったときに、場内からも『え―』という声が聞こえたラストが。満面の笑みで『東京に行って欲しくないです』という北乃の目が潤んでいるのを見ると、行ってこいと精一杯背中を押してるのが感じ取れて…萌えたよ、きいちゃん。あまりに唐突な終わり方のようにも見られるかもしれないけど、アレ以上続けてもタダの少女マンガになってしまうので個人的には好感触。

どちらかといえば、エンドロールの映像が手抜きで残念。salyuの歌が良い感じなので余計にね。後々に美化された己の(それなりに楽しんだ)青春を懐かしんで大人が見るぶんには、素直に楽しめる映画です。