『イエスマン "YES"は人生のパスワード』

ジム・キャリーの浮かない顔のアップからスタートするが、彼が元気なかったり『これも23だ、あれも23だ』とパニックしてるだけでなんだかこっちも無性に心配になってしまうよね。そんなジムが演じる主人公カールは、電話にも出ず、どんな誘いにも「NO」と言う男。友達付き合いも悪く、楽しみはレンタルビデオを一人で鑑賞するような孤独な生活を送っている。生涯の伴侶になると思っていた妻と離婚してから人に期待することを避け続け、こんな引きこもり生活になってしまったというから妙に共感。(してる私ってどうなの)

親友の婚約パーティにも出ず、ついに愛想をつかされた彼の余生に不安がチラついた時、自己啓発セミナーに出席する。なんかもう総裁のテレンス・スタンプがイケイケな音楽と共に出てくるだけで、やばい感じ。『イエス』しか言わないという誓いを立てた彼は、その日からどんな頼みごとにも『イエスマン』となる。

じわじわくるんだよね、最初からガツガツ笑わせるというか、いきなり堪えきれずに吹き出してしまう瞬間がくる。ミッキー・ローク*1人面ケーキはツボった。スパムメールにも"YES"クリックをするのでイラン人花嫁.comにも登録。上司のお寒いノリにも付き合う。何故か顔面セロテープ巻きの顔芸を披露したジム・キャリーケビン・ベーコンに似ていたのはどういうことだ。飛行機の操縦や、韓国語を習い、役に立ちそうにないことにまで次々と手を出しながら、それが後々役に立つことで笑いとドラマを生み、さらに後半は話を転がすピンチ題材になるという脚本の綿密さには感動。『なるほどソコでか!!』と驚きが良い。ネタ素材を廃棄せずに生かしきる技を見せてくれる。

何よりこの映画はヒロインであるズーイー・デシャネルの可愛さ抜きでは語れないと思う。もうとにかくかわいい。いわゆる不思議ちゃんのようでありながら、自分の考えをしっかり持った魅力的なキャラクターを演じている。彼女は「ミュンヒハウゼン症候群」というシュールな名前のインディバンドのボーカルで、コズミックなファッションと彼女の歌声が楽しめるライブシーンは見もの。オタク上司*2のパーティではハリポタのコスプレをしたり、荷物のようにジムに抱えられたりと、とどまることを知らないズーイーの可愛さと「まともさ」がスッと世界に入り込みやすい役割を果たしていると思う。

イエスと言っていれば何もかも良くなるのかといえばそうではなく、決断は慎重に行うもんだというメッセージ付き。まずは肯定し、やってみる。ポジティブになれる健康的な良質コメディ映画。実はコメディ作品は久しぶりなジム・キャリーの健在ぶりは嬉しいし、細かいギャグはきっとジムのサービス精神旺盛なアドリブが多く含まれているんだろうと現場を想像するだけでなんだか微笑ましい。ダンレボは爆笑でした。

監督のペイトン・リードは前作『ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き』は日本未公開でストレートDVDの扱いが相応しい凡作だったけど、『恋は邪魔者』や『チアーズ!!』なんか観ると、はずれが少ない良い監督なのかも。これからも期待したい。

音楽も注目したい。Eelsのホッとするような曲が効果的で、全体を適度に落ち着かせているし、Bloc PartyやThe Bravery*3Dinosaur Jr.、They Might Be Giantsなんかも使われている。Journeyの「Separate Ways」*4の使われ方なんかはもう、笑うしかないよね。お母さん世代にもウケること間違いなし。ミュンヒハウゼン症候群の歌もキワドイ歌詞と大人っぽいズーイーの歌声が素敵なので、是非こちらで。

*1:じゃないんだけどね、実は。

*2:最初から上司のオフィスに飾ってあるハリポタのポスターがコッソリ映っているので、後々のコスプレパーティがまた「納得」と「笑い」の融合を生んじゃう。さらにジムがジムが「300」のDVDを観たあとに、今度は上司が「300」のコスプレをして出てくるっていう。ひっそり被せるのが絶妙。

*3:あ!!

*4:http://www.youtube.com/watch?v=sxxOyGK1pMk