『十三人の刺客』

1963年に公開された工藤栄一の名作時代劇を三池崇史がリメイク。今回一番期待をしていたのは、やはりオリジナルでスガカンが演じていた暴君・松平斉韶役。小学生にして時代劇マニアだった自分にとって、水戸黄門で初めてスガカンを見たときは電気ショックを食らったような衝撃だったもんだ。演じた稲垣吾郎は大根と紙一重の演技がかえって狂気さを増しており、婦警ビーター稲垣*1の名に恥じない、レイプ後斬捨て御免のえげつなさが気持ちいい暴君ぶりだった。

全半では作戦会議や準備段階がやや退屈でもう一工夫欲しかったが、後半50分間はひたすら血にまみれた死闘が繰り広げられて挽回。大掛かりなセット効果もあるが、50分間大きな起伏があるわけではなく、ほとんどは役者の気迫とテンションだけで中だるみせず引っ張り続ける。最後まで緊張感を保ったのはキャスティングの妙という一言に尽きる。松方弘樹のヤクザ映画で輝いていた時期を想起させる生き生きした演技も違った角度かもしれないけれど楽しめた。窪田正孝の軟弱な少年から、人ひとり切り殺せばあとは何人殺したとて同じと言わんばかりの目がすわった脱皮ぶりもなかなか。正直オリジナルのキャストもメインの4人を除くとあまりパッとしないので、むしろリメイクの方が良いと言えなくもない。そもそもスター俳優以外は引き立て役に終始させたオリジナルと比べると目的が違うと思うけど。成継の死に関しては、稲垣が下手だったのかもしれないけれど「生」にすがり出した途端に興醒め。戦いが終わってからの数分間はなんかもう緊張感抜けすぎのハイパー賢者タイムで最悪。

女優はお歯黒・引眉(江戸時代に廃れはじめていたとかそういうのは知ったこっちゃない)というメイクで相変わらず三池は容赦ない。だるま女の登場は、女優が頑張っていた割にドン引き。私の大好きな谷村美月ちゃんにも容赦なく三池の魔の手が伸びていたので、ファンとしてある意味見物ではあったかも。薄暗いところからぼーっと浮かび上がる白塗りお化けのフッキーも、嫌がらせとしか思えなかった。が、彼女は芸妓のお艶と山の女ウパシ、一人二役を演じており、どちらも男が恋しいと思う存在・帰る場所として象徴的に扱われている愛されキャラ。

ところで三池崇史の正統派な映像センスの高さは一定の評価をできると思うし、本格的な時代劇として丁寧に仕上がっている。ところどころにナンセンスな笑いを挟んでいるにしても、彼の作家性が出ていると言うよりは単なるイチ職人に徹したように感じた。彼を表現する言葉として、メディアは「鬼才」という言葉を好んで乱用していると思う。でも、お前そう言われてるだけで満足してんじゃねーよ。もっと振り切れたもん見せてみろよって思ってしまうんだよね。俳優らの演技が緊迫感を纏い続けていること*2と、チャンバラが見やすい(誰がどう死ぬか分かりやすくインパクトがある)ことは好印象。とはいえ、一見きれいにまとまっているものの、いわゆるジャパニーズ・コンテンツの行き先が不透明に感じるような煮え切らない気持ちが残る映画でした。

*1:深町先生の表現を拝借:http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20090423

*2:でも役所広治のジャガイモ顔はちょっぴり見飽きてきた…はぁ「最後の忠臣蔵」もか