『先生を流産させる会』を観ました。

昨年のカナザワ映画祭にてどうして観なかったのだろうと思い続けて早10ヵ月。ようやく観ることが出来ました。当時、金沢にてご挨拶させて頂いたダイシックスさん(id:DieSixx)が絶賛されていましたからね。そりゃ観るしかないでしょうと。ええ。

タイトルの第一印象を過激と思わずに「面白そう」と反応してしまったあたり、ちょいと私は麻痺していたようですが、世間(?)は思った以上に敏感でしたね。同じようにギャップを感じた方もいるんじゃないでしょうか。一番の疑問は観てもないのにどうしてタイトルだけで作品を叩けるのだろうということですが。私の映画を観るうえでのポリシーは「金を払った作品については好き勝手文句を言ってもよし」ですので、まずは観てみないと始まらないわけです。でも心のどこかでワクワクしていました。映画は単なる娯楽ではなく、いつも時代を映し出し、問題定義をするという大切な役割がありますからね。こうこなくっちゃと。ましてや自主製作ですから。大変素晴らしい。とまぁ前置きはこの辺で。以下、無意識にネタバレしてるかもしれないのでご注意を。

担任のサワコ先生が妊娠して「気持ち悪い」から流産させようと5人の少女が立ち上がります。そして廃墟となったラブホテルで5人は誓いの儀式を行い、計画を実行させていきます。給食に薬品を混ぜたり、椅子のねじを緩めて転倒させたりしますが、サワコ先生は一歩も引きません。真っ向から彼女たちの純然たる嫌悪という感情に立ち向かいます。物語は、メンバーの親を巻き込みながらも、リーダー格の少女ミヅキとサワコ先生との激情のぶつかり合いにもつれこんでいくのですが、気が付けば私はミヅキの中に宿るモンスターの姿をした「女」に共鳴していました。「女は気持ち悪い生き物なの!」は名言として語られているような印象ですが、私はその直前のどうして気持ち悪いと思うのか問われたミヅキの放つ「知らん!」に反応。そう、どうして気持ち悪いのか知らんのです。私はその得体の知れない気持ち悪さとずっと戦い続けている大人になれない部分を抱えた仕様の無い25歳だからです。

出産シーンをさも神秘的に扱うテレビ番組、「お腹を痛めた」という恩着せがましい言葉、出産した途端に偉そうになるタレント・・・そして、その過程は結局セックスだという紛れもない事実。中学1年生まで、精子が空中を飛んでいて、結婚したら自動的に受胎すると思っていたことはここだけの秘密ですが、初めてそのプロセスを知った時、同じ登校班にいた男子を見て「あいつの母さん、トミーズ雅みたいな顔してるのに裸になってセックスしたからあいつが産まれたのか・・・」と訳も分からず落ち込んでいました。今思えば失礼な話ですが、当時は真剣でした。やたらと「生命」を美化するメディアに汚染されていたのかもしれません。ただ一つ言えるのは、生きることに必死だった時代にはこんな余計な雑念は存在しなかっただろうということです。

今も心にある、その寄る辺なき感情がようやくミヅキというモンスターの姿となって解放されたような気持ちになりました。そしてサワコ先生の終始「ダメなもんはダメ!」「気持ち悪いもんは気持ち悪い!」というスタンスは爽快ですらありましたし、必ずしも気持ち悪さが全て「女」という存在に集約されるわけではないと思いますが、理由なき説得力は演じた宮田さんの存在あってこそかもしれません。そしてバッサリと斬る「先生は安心したいだけだよ。」というミヅキの一言。ふぅ・・・。

でも同時に納得のいかなかったことは、少女たちの小動物に対する残虐性を関連付けようとしたところ。動物の死骸を弄んだり、笑ったり、そういう安易な残虐性の表現は不必要でした。そんなことをしないごく普通の子が、大人になることに恐怖し、嫌悪するのです。生物への無慈悲な冷酷さとは、全く別の感情ですからね。

内藤監督が男性という立場からタブーを描くパンクな姿勢は素晴らしいと思いました。短い時間の中でモンスターペアレントや、混迷する教育現場の描いた詰め込み方も良い。低音を叩きならす音楽も良かった。前作『牛乳王子』から言えることですが、タイトル込みで娯楽性が高いですね。『お兄ちゃんに近づくな、ブスども!』はどうなんでしょう。気になります。