『悪の教典』教師BANG BANG物語


原作は今月読んだばかり。映画の上映前にチェックしておこうと思ったのです。先に原作の感想をいっておきますか。上巻で爽やかな青春譚を隠れ蓑とするように蓮見のサイコパスとしての狂気を潜めながら、ゆっくりと皮を剥がすように浮かび上がらせたところで始まる下巻の大殺戮。いかにも私が好きそうな題材なんですけどねぇ・・・最後はだいぶ気分悪くなっちゃいました。テーマは大好物なはずなのに、罪もない高校生を殺していく蓮見が憎たらしく感じてきたんですよね。想像力が逞しすぎるのか、淡々と読めない自分にも嫌気が刺してきてしまい、読了後は二度と読むまいと思ったほどです。だからこそ映画では娯楽に昇華してくれることを期待してました。

さて映画はと言いますと、なかなかよかった!何せ血に飢えてますから、私は。『ヒミズ』の二階堂ふみ染谷将太コンビの存在感も然ることながら、『桐島、部活やめるってよ』の浅香航大や『告白』の西井幸人、『書道ガールズ!!』の小島藤子など、ここ最近の青春映画で活躍するフレッシュな面々のあっけない死に様に拍手。あれ?よく考えたら皆さん過去の映画でも理想的な青春を享受することなく本作で死んでますよ、みたいな。世知辛いですね。ちなみに私は、DVDが出たら林遣都キュンの悶えるフェラれ顔だけ1000回リピート再生する予定です。

脚本も原作をこれぐらい短くしてもよかったのではと思うほどまとまっており、細かいカットを違和感なくつなぎ併せることにより、全体の整合性も上手くとれていました。しかし、原作が冗長であるが故に、蓮見の米国時代の回想シーンのブッ込み方には違和感があり、物語上で彼の人格形成をするには別の表現方法で十分代替可能だと思います。原作に忠実にするプロ意識が、結果的に弱点になってしまっているのが惜しいです。どちらかといえば、蓮見が共感能力に著しく欠けることにいち早く気付き、彼を諭す恩師のエピソードの方が破綻した人格をより鮮明にすると思うのですが、絵的に地味になるためか削られてました。

更にその米国時代を挟んだことで、後半のライフルが蓮見に語りかけてくる描写もよく分からず仕舞い。ビデオドロームを思い出しちゃいました。とはいえ、お得意の悪ノリギャグも控えめ。原作に惚れているのかもしれませんが、せっかく二時間に凝縮するのですからもっと振り切っちゃってもいいのになぁと少し歯がゆい。

伊藤英明の演技は文句なし。海猿で鍛えられた肉体を晒し、不自然なほど自然に爽やかな教師になりきってます。殺戮場面では、黒曜石のような澄んだ瞳のまま淡々と数をこなしていく姿に惚れぼれ。原作のような各生徒との一騎打ちは殆どなく、容赦ないバンバンバン。必見です。

いかんせん最近の邦画は血も火薬も足りませんので、こういう作品を契機に我々のような吸血鬼の喉の渇きを潤す作品が沢山出てくると良いなぁと願います。来年以降に胸をときめかせたい人は劇場へ足を運びましょう。三池もサイコパスを描きたいんじゃなくて、単に血に飢えてるだけなんだって分かりますから。そうそう望み通りにはいきませんけどね。でもエンディングのEXILEがもたらす、あっけらかんとした余韻ゼロのチグハグ感は個人的に100点あげちゃうぞ。

結局、吹越満血染めのバールは何も生かされなかったですね。もはや編集ミスでしょうか?

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈下〉 (文春文庫)

悪の教典〈下〉 (文春文庫)