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楳図かずお先生のハイタッチ会に行ってきました。

まことちゃん・劇場用アニメーション(Blu-ray)

まことちゃん・劇場用アニメーション(Blu-ray)

私が大変尊敬している楳図かずお先生のハイタッチ会に行って参りました。と言いましても、先月のことなので時差がかなりありますが、とても楽しいイベントだったので記憶に留めておくためにも書こうと思います。

当日は、共通の趣味を持つ稀有な友人と行きました。梅雨明け間近の炎天下の中で「先生、夏バテしてないかな。大丈夫かなぁ」「もう78歳でしょ?ダンスとかしてるみたいだけど、さすがに弱ってないかな」と高齢アイドルの体調を気遣う私たち。一時期は頻繁にライブも行われていましたが、私はイベントさえも初参加です。ドキドキ。場所は渋谷のタワレコ1階のイベントスペースでした。簡易なステージの前に立って待つ私の心を、鳴り響く「ビチグソロック」と「サンバ・デ・まことちゃん」が解きほぐします。

そして時間になり、紹介とともに小走りで現れる楳図先生。掴みの挨拶は「グワシ!!」―私はしくじりました、関節が思い通りに動きません。私の攣りそうな小指をよそ目に、周りの手練れの楳図ファンと思しき方々のスムーズなグワシはさすがでした。そして「グワシ!!まことちゃん」を歌い始める先生。軽快なダンス、赤白ボーダーのトップスから除くお腹のチラリズム。ノリノリで手拍子をする私たちオーディエンス。オッケー!レッツダーンス!先生、ダンスお上手ですね。先生、お若いですね。先生、1番だけじゃないんですか。先生、ほんの少しだけ手拍子も疲れてきました・・・先生、息切れしないんですか!?

フルで一曲披露した直後に、間髪入れずにトークショーに突入したにもかかわらず、全く息切れしない先生に驚愕せざるを得ませんでした。始まる前に「夏バテしてないかな」等という心配をしておきながら、手拍子だけで掌が痺れている自身を呪いました。

冒頭でも述べた通り、今回のイベントは「まことちゃん 劇場用アニメーション」のBlu-ray発売記念だったので、最初はそのお話でした。トークショーでは、大阪万博後の70年代前半、日本がまだまだ未来を信じて右肩上がりだった頃に「漂流教室」のような暗い話を描いていたのでいつも僕はズレているんですと笑いつつ、それが結果的に未来を予言するような内容になっていたことや、その後に少しずつ日本がおかしくなり始めていた頃に「まことちゃん」を発表されたこと語りつつ、色々楽しく脱線してました。「まことちゃん」については、Blu-ray特典の小冊子に詳細なインタビューがあります。興味深い部分を抜粋しますね。

怒りや悲しみ、恐れといった感情とは違って「笑い」というのは知的で、文化的なものだと考えています。だからこそ「笑い」を生み出すのはむずかしいんですが『まことちゃん』の世界に入ってきてくれれば、必ず「笑い」を提供できるという自信があるんです。それはなぜかというと、「お話」にこだわってきたから。(中略)しっかりした「お話」があって初めて、時代の移り変わりやメディアの変化に耐えられるキャラの強さが得られるんです。

私は「まことちゃん」の面白さは、その強烈なキャラクターにあると思ってました。しかし、確かにストーリーが弱いとキャラクターも生かされない。時代が移り変わっても『幼児の生態』はそう変わることはありません。その観察に力を入れて『幼稚園児の日常』を舞台にお話を広げたからこそ「まことちゃん」の面白さは今でも通じるんですね。

さて、話は今秋公開の映画「マザー」に移りました。撮影については「本当に大変だったぁ〜!」と大変な労苦があったご様子。主演の片岡愛之助さんが某ドラマの影響もあり、キャスティングの時点では予想もしなかったほどクランクイン時には超売れっ子になっていたため、撮影はわずか2週間で行われたとのことです。他でも昨年「11月13日に高尾・楳図邸でクランクインし、千葉・松戸、静岡・御殿場、沼津をへて、11月下旬にクランクアップ」と書かれてましたものね。御年78歳とは思えない殺人的スケジュールです。愛之助め!

楳図先生の原点に迫る物語を、自らメガホンを取って初監督。期待に胸が膨らみますね。妥協せずに、挑戦し続ける先生の生き様がカッコいいです。

最後はBlu-ray購入特典だった整理券を持っている人にハイタッチ。アイドルの握手会ばりにはがしがキツイと思いきや、一言お話ができるようで!自分の番が回ってくるまでドキドキだったのですが、いざ先生を前にすると言葉がうまく出てきませんでした。

『まずはハイタッチしましょう〜』
「はい!」
ハイタッチ、右手が噛みあわずに掠る。
『あ、上手く合わなかったのでもう一回やりますか』
優しさに心が震えます。
「ありがとうございます!」
その後、一言お話しできるようだったので
「ダ、ダンス素敵でした!」
人間、緊張すると直近の記憶から言葉を捻り出すようです。もっと言いたいことあったのに!
『ありがとうございます。ライブもやるんで、遊びに来てくださいね。」
その日、赤白ボーダーのTシャツを着ていたので
『あ、もしかしてそのシャツは』
「そ、そうなんです!先生にお会いできるので、意識してみました!」
『ありがとうございます』

常にニコニコと朗らかな笑みを浮かべる先生に「いつまでもお元気でいてください。映画楽しみにしています。」とありきたりな言葉に精一杯の思いを乗せる私でした。

サイン入りの色紙が当たる抽選会もあったのですが(なんと当たった人は名前をその場で書いて貰える上に一緒にチェキ撮影も!)私は当たりませんでした。しかし、5枚(だった気が)の色紙すべてに違うイラストが丁寧に描かれており、それを事前に拝むことが出来たので幸せでした。当たった方々おめでとうございます!そして大好きな楳図先生にお話しできた多幸感にフワフワと包まれつつ、まことちゃんのポスターを小脇に抱えて友人とタワレコを後にする私だったのでした。

‐おまけですが、楳図先生の有名な作品以外にもっと触れてみたいけど何から読んだらいいかなと思われている方は、昨年ビッグコミック創刊45周年を記念して発売した短編集がおススメです。価格もお手頃ですしね。短編十作品が収録されておりますが、どれも単なるホラー作品にとどまらない名作揃いです。人間の悲しい宿命や性が迫力のあるタッチで描かれており、へヴィな文芸小説を読んだような読後感がしばらく抜けないものばかりなので、ご興味のある方は是非。

‐ 映画「マザー」オフィシャルサイト
http://mother-movie.jp/