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アニメ「少年ハリウッドについて」②

 

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前回に引き続き、自分なりに「少年ハリウッド」について思うことを書きました。

・アイドルの実存は本質に先立つ

少年ハリウッドの名物と言われているのが「自己紹介」です。メンバー5人それぞれ自己紹介のフレーズがあります。第1話で「少年ハリウッド」の名前を継承し、アイドル活動をすることになったメンバーに最初に与えられたミッションは、下記の「自己紹介」でした。

風見颯(カケル)
「君の宇宙は、僕の宇宙。僕の宇宙は、君の宇宙。つまり僕は君に夢中!夢をカケルよ、風見颯。高校二年生の十七歳です!」

甘木生馬(マッキー)
座右の銘は、仏恥義理魂。ハンパなことは嫌いです。マッキーこと、甘木生馬、十八歳。夜露死苦。」

佐伯希星 (キラ)
「少し前まで、星の国にいたんだよ。このキラキラが見えますか?君の希望の星になりたい、佐伯希星、最年少、中学三年生の十四歳です!」

富井大樹 (トミー)
「世界一のラッキーボーイ。君の運気上昇担当になりたい、富井大樹十五歳、高校一年生です。お守りにしてね!」

舞山春 (シュン)
「笑顔でキュン!怒りんぼにシュン。この八重歯にかけて、君の最後の彼氏になることを誓います。十五歳の高校一年生、シュンシュンこと、舞山春です!」


そう。ご覧の通り、とっても照れくさいんですよ、これが。

自己紹介とは、自分は何者であるかを簡潔に他人に伝えることです。しかし、それは偽りない自分というよりもむしろ「他者にどう認識されたいか」を伝える行為でしょう。そして彼らは自分で考えたわけでもなく、渡された紙に書いてある自己紹介文という名の台詞を言わなくてはならなかった。元子役のキラはソツなくこなしますが、アイドルよりもシンガーソングライターを志望しているシュンはメンバーの中でも特に苦労します。

シュンの恥ずかしそうな自己紹介を見たシャチョウは「恥ずかしいことを恥ずかしそうにやることが、どれほどまでに恥ずかしいか。なりきること、やりきること、それを大切にしなければアイドルは只の恥さらしになる。」とバッサリ言い放ちます。

何度か言及してきましたが、ハリウッド東京にはシャチョウがいます。シャチョウの命令は絶対、それがハリウッド東京の約束。生活感がなく、常に謎に包まれた存在。チョビ髭だし、年齢不詳だし、かなり胡散臭いです。少ハリのメンバーはシャチョウについて詮索することは禁止されています。何を隠そう彼は初代少年ハリウッドのメンバーなのですが、当時のことは小説「少年ハリウッド完全版」にて詳しく描かれています。また、タイトルの「HOLLY STAGE FOR 49」の49は彼の年齢ですね。シャチョウ(=初代少年ハリウッドのメンバー・ゴッド)はこの物語のもう一人の主人公だと思います。

彼のアイドルに対する想いの強さは尋常ではありません。このまま少ハリと心中する気なのだろうなと思わせる、覚悟と信念を感じます。そして少ハリには、シャチョウのアイドル哲学がギッシリと詰まっているのです。ひいては人生哲学にまで及んできます。

自己紹介ひとつ取っても大きな意味があります。本質は追いついていなくとも、その言葉は行動を引っ張る力があります。嘘も重ねれば誠になると言ったら表現は悪いですが、近からずも遠からずでしょう。先を行く自分に、それを追いかける自分。それを繰り返して、彼らは「アイドル」になっていくのです。

アイドルとは、常に恥ずかしさと紙一重の存在なのかもしれません。一見ふざけたような格好で歌って踊る。それをやりきって輝くのが正真正銘のアイドル。このマインドはメンバーにもしっかり浸透していったようで、1期の最終話でマッキーがかつてのヤンキー仲間に「マジなんだな、お前」と言われ「マジじゃなきゃ、アイドルなんてふざけたことやってられねーよ」と言い切る台詞は清々しく気持ちが良いです。

名物なので自己紹介はしばしば披露されますが、最終回のそれは本当に感動的です。最終回の26話は1話丸ごとクリスマスライブのステージが放送されたのですが、最初に苦労していたシュン以上に、簡単にやってのけたキラの自己紹介に目頭が熱くなりました。それまで「このキラキラが見えますか?」という時に毎回ついていたキラキラとしたエフェクトが、最終回はなくなったのです。それは私たちが観客として目の前の彼らを見ていることを完璧に表現していました。まさにライブ!実録・少年ハリウッド!あれ以上の最終回は、私はないと思ってます。言い切るよ!

・神と生贄の間で揺れるアイドルとは

少年ハリウッドのメンバーは皆、5人それぞれ悩みや葛藤を重ねて成長していきますが、中でもカケルはの心模様は複雑で、揺れ動く繊細な気持ちは初々しいポエム形式で綴られ、物語に瑞々しさを与えてくれます。

カケルは元々控えめな性格で、スカウトされて部活の延長線のような感覚でアイドルになり、少しずつ楽しさを見出しますが、二期に入りグループの人気が出始めてもどうして自分がアイドルとして声援を受けるのかピンとこない日々が続きます。そんな時に、それまでマッキーがセンターだった体制をシャチョウが変えようといいます。そしてネタバレとはいえ差し支えないと思うので書くと、カケルがセンターに選ばれるのです。

これはカケルの自意識の変化において重要な意味を持つエピソードでしたが、そこで周りが思う自分と自分の思う自分の違いに思い悩むカケルに語られるシャチョウの話を抜粋します。

アイドルってね、あるものもないものも全てを求められてしまう存在なんですよ。(中略) 求められて求められて、求められる存在なんです。そのすべてに応えられる方法はただ一つ、全部を出すことです。

神様ってね、自分からなるものじゃなくてならされるものだと私は思うんです。(中略) 生贄もすすんでなるものじゃなくてならされるものですね。アイドルはね、追いかける側の時と場合によって神にだって生贄にだってなってしまうんです。


この「神と生贄」論はまっさらな心を持ったカケル君に対しても、もう少しわかりやすい言い方をしてあげれば良かったんじゃないかと思いましたが、この後カケル君はメンバーが腕を繋げて作ったハードルをジャンプして越えながら「そうか僕たちは自分の命に人生を捧げて生きているんだ」というアンサーを導き出してストンと着地しているのでヨシとしました。

シャチョウが初代少年ハリウッドに在籍していた時のニックネームは「ゴッド」でした。少年ハリウッドに舞い降りた神。それは彼が望んだ肩書ではなかったのだと思います。彼もまた、ならされた神だったのでしょう。そして彼はおそらく自身を、憧れ続けたアイドルという神的存在(概念)に捧げる生贄だとも思っているのかなと感じました。

よくアイドルは「神聖な存在」とされ、熱烈なファンのことは「信者」ともいい、所縁のある地は「聖地」されます。それはネタ的に使われる言葉でもありますが、そこまで言わしめるアイドルとは一体どういう存在なのかということに真面目に向き合い、少ハリの世界で、言葉で説明したのだと思います。(余談ですが、聖地であるハリウッド東京で立てこもり事件をメンバーが起こした時、停電した劇場でペンライトを灯してアカペラで歌うシーンは、教会で蝋燭を灯して歌う聖歌隊のようでした。)

・「永遠」にアイドルでいる矛盾と可能性

15年前に解散した初代少年ハリウッドは、新生少年ハリウッドに様々な影響を与えます。解散し、それぞれの道を歩んだ彼らは、アイドルに終わりがあることを明言し、アイドルの永遠性に矛盾を突きつける存在です。初代の熱烈なファンでもあるトミーの中で初代が成し得なった「永遠にアイドルでいる」ことを実現させる夢と現実の衝突が引き起こす葛藤がいかほどかと想像するだけで胸が張り裂けそうになります。

新生少ハリにも「延命」という言葉が使われています。それは必ず訪れる終わりが内包された言葉です。ともすれば、夢も希望のない言葉になってしまいそうな危うい表現の中で、永遠という言葉が持つ無限の可能性がせめぎ合い、眩いばかりの光を放っているのです。初代少年ハリウッドの歌「永遠never ever」の歌詞に「限りない夢抱け 限りある時が味方さ」とあります。有限だからこそ尊い存在なんですね、アイドルって。

少年ハリウッドは、どこまでも正直で嘘のない正真正銘のアイドルアニメだと思います。実際、三次元のアイドルを応援した経験がある身としては、握手会や入待ち出待ち、センター入替えなどのリアルな問題に肉薄する度、身につまされました。一体どこまで正直なんだと。(原宿の違法アイドルグッズやジャ○ーズ御用達の黒マスク、ファンのツイッターなど小ネタも満載)

それと同時に、少年たちの青春ドラマでした。楽屋で繰り広げられるやりとりは時にトンチンカンに見えますが、ふと琴線に触れる言葉が弾け、波紋のように広がって、伏線の回収というテクニックめいたものよりも、ひらめきのようなときめきのような淡い感情にそっとタッチするのです。それが計算しつくされた方法論の上だとは分かっていても、私にはとても心地良いものだったのです。

あと、単純にかわいいんですよね。応援したくなる、愛すべき子たちばかりです。

そしてラストまで嘘をつかないことが夢を壊すことではないと見事に提示し、テレビの前という名の観客席で彼らを見守るファン(視聴者)の中で確かに彼らのキラキラとした姿は、本当の意味で「永遠」になったと思うのです。

長くなりましたが、これを読んでくださった方でまだ少年ハリウッドを観ていない方、少しでも興味を持った方は是非見てみてください。お粗末な感想文が、そんなきっかけになったら嬉しいです。

・ ・ ・

アニメ放送終了後、小説でストーリーが継続することや、FC発足(ええ、即入会しました)関連イベントなど動きがある少年ハリウッド。私のように拗らせたオタク向けに、彼らが時空の狭間で確かに存在するアイドルなんだよ証明し続ける方々のサービス精神に大いに乗っかり続ける所存です。

 

‐公式サイト StarChild:少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 50-

 

 

小説 少年ハリウッド 完全版 (小学館文庫)

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